地元では"釣れる"川だ。
ポイントに着く。かろうじて周りが見えるくらいの明るさ。
強風。
ルアーはビッグバド。カション、カショション、反応なし。
それなら、とジタバタアライくんをチョイス。
えいっと投げて、直後に「パンッ!」と乾いた音がした。
「えっ!?」
夕焼け空にジタバタアライくんが飛んでいった。
次の瞬間!階段を駆け上がった!
息切れをしなかったと後で思ったが、事故後アドレナリンが出て痛みが無いように、気が動転して気がつかなかったのだろう。
近くの、川から5メートルほどの高さの橋の上から暗い川の流れを覗き込む。
ルアーの位置がわかるようにと「ケミホタル」をつけておいてよかった。
じっと見る。あった! かすかに緑色の光がゆらゆらしている。
しかし、その川岸には背の高いアシ? がびっしりと生えていて、とても近寄れない。
その時である。
「釣れますか?」と声がした。
「えっ?」と振り向くと、大学生くらいの若い女性が笑顔で立っている。
美人だ。
「えっ、あの、その、ルアーが流されて・・・」
川を覗き込む。まだ光が見えている。
「いやあ、バスとかナマズとか・・」と言いながら顔を上げると、女性ははるか向こうへ。
ハッとして再び、川を覗き込む。ああ! 無い! 見えない!
ああ~!!!
アライくんを見失ってしまったのだ。
途方に暮れて橋の上でうなだれる。すれ違う人たちが心配そうにこちらを見てくる。
今にも飛び込みそうな表情をしていたに違いない。
糸が切れてからどれくらい時間が、経っただろうか。
ここは川だし、流れがゆるやかとはいえ、10分が限界だろう。
もうどこかへ流されていった…。
何度と無くため息をつき、しばらくしてようやく、あきらめがついた。
風が容赦なく吹き付ける、寒い。
切れた糸をガイドに通し、再度ルアーを結ぶ。
そして、橋から20メートルほど下流の、川岸まで降りることのできるポイントで再び釣りをすることにした。
ポロプロポロ、とバズベイトを引く、が、とても集中できない。
もう、ジタバタアライくんは、帰ってこない。
・
・
そんな時、「あっ!!」
ぼんやりとした緑色の光がゆっくりと川上から流れてきた。
次の瞬間、その光に向かってバズベイトを投げる自分がいた。
よし!! 一発で引っ掛けることができた。
あきらめずにいれば、奇跡はやってくる、のかな?
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